与力お家事情が読める時代小説「忍冬」

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忍冬あらすじ

井川香四郎の人気連作時代小説、梟与力吟味帳の第三弾で文庫版書き下ろしの作品です。

町人という立場からお白洲で裁きを行う吟味方与力となった藤堂逸馬には強い絆で結ばれている友人がいます。かつて真相が定かでない罪で捕縛されて即日切腹を命じられた武田徳之介の息子で信三郎。その信三郎の事情が描かれています。

そして逸馬の勤める北町奉行所の遠山金四郎と南町奉行の鳥居耀蔵、二人の背後に事件の真相が見え始めた時に新しい殺しが起こります。

逸馬と進三郎が一緒に駆け回り事件解決へと迫っていきます。逸馬の思いと関わってくる登場人物たちとの掛け合いを読んでいきます。四つの作品すべてに魅力があり惹き込まれていきます。

橋本屋の魂胆を探る強い絆で結ばれた進三郎と逸馬「散りて花」

勘定吟味役から呼び出された八助はヘマをやってしまったのかと心配するところから話は始まります。

パチ助こと毛利源之丞八助が勘定吟味方改役になって二月が過ぎた頃でした。美濃部から帳簿の出入りがおかしいので調べろと達しを受け調べる事になります。普請請負問屋『橋本屋』の主人である尚右衛門が通う料亭に藤堂逸馬が足を運んでいました。

逸馬も再吟味を頼まれて調べているところでした。清八殺しの調べで事件のあった夜、清八と尚右衛門が会っていた事は分かっている事でまずはそこから当たる事にしていました。逸馬が外に目を向ければそこには八助がいて同じ人物を追っている事は明らか。そんな中奥座敷では秘密めいた話がされていました。

そして信三郎も密会をしていた一人、長野太郎左衛門を調べていました。寺社奉行直々の命令でした。橋本屋を訪ねた逸馬は殺しの容疑が掛かっている事を告げます、何か魂胆があるのか橋本屋は自分が殺したと言います。

この三人の関係が交差する時、物語が最上級に面白くなります。(430字)

事件の真相を追う逸馬に八助が齎した情報を読む『忍冬』

おきわが手籠めにされた挙句惨殺された事件が起きます。

お白洲の判決の話から始まります。時代物を読むにあたって判決シーンは楽しみなところです。北町奉行の遠山金四郎の判決に逸馬が付いていたものです。

その内容は町娘が藤吉と薬種問屋の手代に手籠めにされたうえで惨殺されたというものでした。なのに藤吉はその犯行時刻に別のところにいたのだと言う証言者・真琴がいてもう一度調べ直す事になったという話です。逸馬は最初の自白に下手人しか知らない事が含まれているのにずっと引っ掛かっていました。

調べていくうちに複雑な事が分かってきます。真琴と藤吉が内緒で会っていたのを原田健吾と岡っ引きの辰蔵が見ていました。

その報告を受けた逸馬は藤吉を引っ張ってくるように命じます。そんな中真琴と藤吉が同時にいなくなって話は展開していきます。結局、藤吉はとんでもないロクデナシで真琴は騙されて間一髪のところを逸馬たちに助けられます。

軽快なテンポで話が進んで読みやすい作品です。

無念を晴らすために逸馬が悪を断つ『紅葉散る』

逸馬が最近、ずっと誰かに尾行されているような気がしている、という描写から始まります。

知らないうちに土地を奪われて最後は殺されてしまう孫六老人の話になるのですが、無念を晴らすために逸馬が悪を断つ話が実に爽快です。誰かに尾行されていると思っている逸馬がその足で向かった先で出会ったのが栄吉という少年です。

渋谷村に住む孫六老人は栄吉が村に入って松茸を採っている事を密かに許していました。孫六からしたら栄吉は孫のような存在、なのに半五郎の手下がやってきてその里山は美濃屋のものだと言い出します。

勿論、孫六は北町奉行所に訴え出ます。逸馬は双方の言い分を聞きますが、その翌朝に孫六が首を吊った死体で見付かります。

逸馬はすぐに美濃屋を呼び出しますが居留守を使って番頭の吾兵衛が出てきます。そして美濃屋と南町奉行の鳥居耀蔵に結び付きがある事が分かって孫六の里山を執着していた事に気付きます。

妖怪と呼ばれた鳥居耀蔵の悪い部分がよく見える作品となっています。その確執を読み解いていくのが実に面白いです。







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